「時計のオーバーホールって、なんだかんだ費用がかかるし、もったいないかな…」「まだ動いているから大丈夫だよね?」
大切にしている腕時計、特に機械式時計のメンテナンスについて、このように感じている方は少なくないでしょう。メーカー推奨の3〜5年ごとのオーバーホール、本当に必要なのでしょうか? 10年、20年と放置してしまったら、どうなるのでしょうか?
この記事では、時計のオーバーホールが「もったいない」と感じられる理由から、その必要性、適切なタイミング、気になる費用相場、そして費用を抑えるコツまで、あらゆる疑問に答えます。
この記事のポイント
- オーバーホールとは?: 時計を分解し、洗浄・注油・調整を行う徹底的なメンテナンスです。
- 「もったいない」と感じる理由: 高額な費用、購入価格との比較、効果が見えにくい点が挙げられます。
- 不要なケース: 低価格帯の時計やクォーツ式、長期保管する場合など、状況によっては不要なこともあります。
- 放置リスク: 5年、10年、20年と放置すると、油切れによる部品摩耗やサビが発生し、高額な修理費が必要になるリスクが高まります。
- 適切な頻度: 一般的に機械式は3〜5年、クォーツ式は5〜7年が目安ですが、モデルや使用状況で異なります。
- 費用相場: 正規メーカー、修理専門店、量販店(キタムラなど)で価格帯やサービス内容が異なります。
- 依頼先の選び方: 保証内容、実績、見積もりの丁寧さなどを比較検討しましょう。
- 費用を抑えるコツ: 相見積もり、複数本依頼、キャンペーン活用などで費用を節約できます。
- 結論: 時計の価値や思い入れ、予算に応じて判断すべきですが、故障後の修理は高額になるため、動いているうちのメンテナンスが結果的にコストを抑えることにつながります。
この記事を読めば、あなたの時計にとってオーバーホールが本当に「もったいない」のか、それとも「未来への投資」なのか、明確な判断基準が見つかるはずです。
そもそも時計のオーバーホールとは?

時計のオーバーホールとは、単なる電池交換や部分的な修理とは異なり、時計の心臓部であるムーブメント(機械部分)を部品単位まで分解し、洗浄、注油、摩耗・破損した部品の交換、再組み立て、精度調整、防水検査などを行う、いわば「時計の人間ドック」のようなものです。この工程により、時計本来の性能や精度を新品に近い状態に回復させることを目指します。
特に機械式時計は、数百もの細かい部品が歯車で連動し、ゼンマイの力で動いています。内部の潤滑油は時間と共に劣化・揮発・凝固するため、定期的な洗浄と注油が不可欠です。一方、クォーツ時計は電池と電子回路、モーターで動くため、機械式ほど頻繁なオーバーホールは必要ない場合もありますが、歯車部分の油切れや、汗や湿気による電子回路の腐食、防水パッキンの劣化などを防ぐために、定期的なメンテナンスが推奨されます。
【オーバーホールの主な工程(イメージ)】
- 分解: ムーブメントを細かな部品レベルまで分解します。
- 洗浄: 専用の洗浄液で部品の汚れや古い油を徹底的に洗い流します。
- 点検・部品交換: 各部品の摩耗や破損がないかチェックし、必要に応じて新しい部品に交換します。
- 注油・組立: 新しい潤滑油を適切な箇所に適量注しながら、慎重に組み立てていきます。
- 精度調整: 時計の動きを測定し、正確な時間を刻むように調整します。
- ケーシング・防水検査: ムーブメントをケースに収め、防水性能が保たれているかテストします。
- 最終チェック: 全体の動作や外観を確認し、完了です。
このように、オーバーホールは非常に手間と専門技術が必要な作業であり、それが費用に反映される理由の一つとなっています。
オーバーホールが“もったいない”と感じる3つの原因

定期的なオーバーホールが推奨される一方で、「もったいない」と感じてしまうのには、主に以下の3つの理由が考えられます。
- 費用が高い
オーバーホールの費用は、時計のブランドやモデル、機構の複雑さ、依頼先によって大きく異なりますが、決して安価ではありません。国産のシンプルな機械式時計でも数万円、複雑機構を持つ高級ブランド時計では10万円を超えることもあります。特に、時計の使用頻度が低い場合や、他にも時計を持っている場合、この費用負担は大きく感じられるでしょう。 - 本体価格より高くなるケースがある
数万円で購入した比較的安価な機械式時計の場合、オーバーホール費用が時計の購入価格を上回ってしまうことがあります。そうなると、「修理するより新しい時計を買った方が良いのでは?」と考えてしまうのも無理はありません。 - 内部作業のため価値を実感しにくい
オーバーホールは時計の内部をメンテナンスする作業が中心です。外装の研磨を同時に依頼しない限り、見た目に大きな変化はありません。そのため、高額な費用を支払っても「何が変わったのか」を実感しにくく、費用対効果が見えにくいと感じることがあります。
これらの理由から、特にまだ時計が問題なく動いている場合、「本当にオーバーホールに出す必要があるのだろうか?」「もったいないのでは?」という疑問が湧いてくるのです。
オーバーホールは不要なケースもある?

すべての時計に、画一的にオーバーホールが必要というわけではありません。状況によっては「不要」あるいは「後回しにしても良い」と判断できるケースもあります。
- 安い機械式時計の場合
購入価格が数万円程度の安価な機械式時計は、オーバーホール費用が購入価格を上回る可能性があります。また、モデルによっては交換部品の調達が難しかったり、割高になったりすることもあります。このような場合は、費用対効果を考慮し、故障したら買い替えるという選択も合理的かもしれません。 - クォーツ時計の場合
前述の通り、クォーツ時計は機械式時計に比べて構造がシンプルで、油切れによる摩耗リスクは比較的低いと言えます。電池交換の際に内部の状態をチェックしてもらい、特に異常がなければ、必ずしも数年ごとのオーバーホールにこだわる必要はないかもしれません。ただし、長年使用している場合や、防水性能を維持したい場合は、パッキン交換を含むメンテナンスが推奨されます。 - 長期保管して動かす予定がない場合
形見の時計や記念の品として、今後身に着けて使用する予定がなく、大切に保管しておきたいという場合。無理に高額な費用をかけて動く状態に戻す必要はないかもしれません。ただし、保管状態によっては内部でサビや腐食が進行する可能性もあるため、定期的に状態を確認することをおすすめします。
【判断のポイント】
- 時計の購入価格や現在の市場価値
- オーバーホールにかかる費用
- その時計に対する思い入れの度合い
- 今後の使用頻度や使い方
- クォーツか機械式か
これらの要素を総合的に考え、「オーバーホール費用を払ってでも使い続けたいか?」を判断基準にすると良いでしょう。限定モデルや特別な思い入れのある時計であれば、費用対効果だけでは測れない価値があります。
オーバーホールしないとどうなる?故障事例と修理費用
「まだ動いているから大丈夫」と油断してオーバーホールを怠ると、後々どのような問題が発生する可能性があるのでしょうか。放置年数ごとに起こりうる代表的なトラブルと、それに伴う追加修理費用の目安を見てみましょう。
放置年数 (目安) | 代表的な症状・トラブル例 | 追加修理費用の目安 (オーバーホール基本料金に加算) * |
---|---|---|
5年程度 | ・潤滑油の劣化・揮発による精度の悪化(時間が進む・遅れる) ・ゼンマイの巻き上げが重くなる | + 5,000円 ~ 15,000円程度 |
10年程度 | ・油切れによる歯車の摩耗・破損 ・リューズやプッシュボタン周りのサビ・腐食 ・防水パッキンの硬化・劣化による防水性能の低下 | + 10,000円 ~ 30,000円程度 |
20年程度 | ・劣化した油の固着による動作停止 ・ゼンマイの金属疲労による切断 ・サビや摩耗による部品交換(高額化・部品入手困難のリスク) | + 30,000円 ~ 70,000円、あるいはそれ以上 |
*部品代はブランド、モデル、破損状況によって大きく変動します。上記はあくまで目安です。
特に深刻なのは、潤滑油が切れた状態で時計を使い続けることです。金属製の歯車同士が直接こすれ合い、摩耗が進んでしまいます。摩耗した部品は交換が必要になりますが、ブランドやモデルによっては部品代が高額になったり、製造終了から時間が経っていると部品そのものが入手困難になったりするケースもあります。
また、リューズや裏蓋のパッキンはゴム製のため、経年劣化で硬化・収縮します。これにより防水性能が失われ、内部に湿気や水分が侵入し、ムーブメントのサビや文字盤のシミにつながる恐れがあります。
10年、20年とオーバーホールをせずに放置された時計は、内部の状態が予測しにくく、見積もりを取ってみたら予想外の高額修理になることも少なくありません。動いているうちに定期的にメンテナンスを行うことが、結果的に時計を長持ちさせ、トータルの修理費用を抑えることにつながるのです。
何年ごと?10年・20年放置はNG?

では、具体的にどのくらいの頻度でオーバーホールを行うのが適切なのでしょうか?
- 一般的な推奨頻度:
- 機械式時計: 3〜5年に一度。これは、潤滑油の劣化やパッキンの硬化が進む一般的な期間を目安として、多くの時計メーカーが推奨している頻度です。
- クォーツ時計: 5〜7年に一度 が目安とされることが多いですが、機械式ほど厳密ではありません。電池交換のタイミング(通常2〜3年ごと)で内部点検を受け、必要に応じてオーバーホールを検討するのが現実的でしょう。
- 取扱説明書の確認: 最も確実なのは、お持ちの時計の取扱説明書を確認することです。モデルや搭載されているムーブメントの種類によって、メーカーが推奨するオーバーホール周期は異なります。
- 使用環境による違い:
- 防水性能: ダイバーズウォッチなど、水辺で頻繁に使用する場合は、防水性能維持のため、推奨期間より早めにパッキン交換を含むメンテナンス(オーバーホール)を行うのが安心です。
- 温度変化・磁気: 急激な温度変化や、スマートフォン・パソコンなどの磁気製品の近くでの使用が多い環境は、時計にとって負担が大きいため、劣化が早まる可能性があります。
- 使用頻度: 毎日使用する時計と、たまにしか使用しない時計では、部品の摩耗度合いは異なりますが、潤滑油の劣化は使用頻度に関わらず進行します。長期間使用しない場合でも、定期的なメンテナンスが推奨されます。
10年・20年放置は基本的にNG
前述の通り、10年、20年とオーバーホールをせずに放置することは、時計にとって大きなリスクを伴います。
- 10年放置: 潤滑油の劣化・固着が進み、部品の摩耗が深刻化している可能性が高いです。リューズやパッキンの劣化による防水不良のリスクも高まります。
- 20年放置: 部品の摩耗やサビ、ゼンマイ切れなどの致命的なダメージが発生している可能性があります。メーカーでの部品保有期間(通常、製造終了から10年〜20年程度)を過ぎてしまい、修理自体が困難になるケースも出てきます。
もちろん、保管状態や運によっては、20年経過していても軽微なメンテナンスで済む奇跡的なケースも報告されていますが、それは稀な例と考えるべきでしょう。高額な修理費用や修理不能のリスクを避けるためには、推奨される頻度でのオーバーホールが賢明です。
オーバーホール費用の相場と“安い”サービス比較
オーバーホールを依頼する際、最も気になるのが費用です。依頼先によって価格帯は大きく異なります。
依頼先 | 価格帯の目安 (機械式3針モデル) | 納期の目安 | 保証期間の目安 | メリット・デメリット |
---|---|---|---|---|
正規サービスセンター (メーカー) | 40,000円 ~ 70,000円程度~ (ブランド・モデルによる) | 4~8週間程度 | 12~24ヶ月 | ◎純正部品使用、◎長期保証、◎安心感 △費用が高め、△納期が長い場合がある |
時計修理専門店 | 20,000円 ~ 40,000円程度~ (技術レベル・設備による) | 3~6週間程度 | 6~12ヶ月 | ◎費用が比較的安い、◎納期が早い傾向 △技術力に差がある、△純正部品が使えない場合がある、△保証期間が短い場合がある |
家電量販店・カメラ店 (例: キタムラ) | 20,000円 ~ 40,000円程度~ (提携修理工房による) | 4~8週間程度 | 6~12ヶ月 | ◎窓口が多く依頼しやすい、◎比較的安価 △提携工房の技術力に依存、△専門的なモデルは対応不可の場合も、△仲介手数料が含まれる可能性 |
主要ブランドのオーバーホール料金目安 (正規サービス vs 修理専門店)
- ロレックス: 正規 約8万円~ / 専門店 約3万円~
- オメガ: 正規 約7万円~ / 専門店 約3万円~
- タグ・ホイヤー: 正規 約5万円~ / 専門店 約2.5万円~
- 国産 (セイコー、シチズンなど): 正規 約2万円~ / 専門店 約1.5万円~
※上記はあくまで目安であり、モデルの複雑さ(クロノグラフ、GMTなど)や部品交換の有無によって変動します。最新の正確な料金は各社にお問い合わせください。
ご覧の通り、正規サービスセンターは安心感と保証が手厚い反面、費用は高額になる傾向があります。一方、時計修理専門店や量販店系のサービスは、費用を抑えられる可能性があります。ただし、修理専門店は技術力や設備にばらつきがあるため、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
キタムラのオーバーホール料金はいくら?
身近な店舗で依頼できるサービスとして、カメラのキタムラのオーバーホールが挙げられます。キタムラでは、提携している時計修理工房にてオーバーホールを受け付けています。
キタムラのオーバーホール料金目安 (2025年5月現在)
- ロレックス (自動巻き3針): 39,600円~
- オメガ (自動巻き3針): 30,800円~
- タグ・ホイヤー (自動巻き3針): 24,200円~
- 国産ブランド (自動巻き3針): 16,500円~
納期: 約4週間~(見積もり期間含む、修理内容により変動)
保証: 修理完了日から1年間
注意点:
- 上記は基本料金であり、部品交換が必要な場合は別途費用が発生します。
- クロノグラフなどの複雑機構モデルは、別途見積もりとなります。
- 一部対応できないブランドやモデルもあります。
キタムラのサービスは、比較的リーズナブルな価格設定と、全国の店舗で受け付け可能な利便性が魅力です。ただし、実際の作業は提携工房が行うため、修理の品質は工房に依存します。
正規SC vs. 専門修理業者 vs. 個人店 おすすめは?

オーバーホールの依頼先は、大きく分けて「正規サービスセンター(メーカー)」「時計修理専門店」「個人経営の時計店」の3つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、何を重視するかによっておすすめの依頼先は変わってきます。
- 正規サービスセンター (メーカー)
- メリット: 純正部品の使用、メーカー基準の高い技術力、長期の修理保証(1~2年)、安心感。ブランド価値を維持したい場合に最適。
- デメリット: 費用が高額、納期が長い傾向がある。古いモデルだと部品がなく修理を断られる場合もある。
- 時計修理専門店
- メリット: 正規より費用が安いことが多い、納期が比較的早い、幅広いブランドに対応できる場合がある。
- デメリット: 技術力や設備にばらつきがある(信頼できる店選びが重要)、純正部品が手に入らない場合がある、保証期間が短い(半年~1年が多い)。
- 個人経営の時計店
- メリット: 店主との距離が近く相談しやすい、ヴィンテージや特殊な時計に強い場合がある、独自の技術やネットワークを持っていることがある。
- デメリット: 技術力や信頼性が店主個人のスキルに大きく依存する、設備が限られている場合がある、保証がない、あるいは短い場合がある。
【依頼先選びの3ステップ】
- 重視するポイントを決める: 安心感・保証重視なら正規SC、費用・納期重視なら修理専門店、特殊な時計なら個人店、といったように、自分が何を最も重視するかを明確にします。
- 候補を探し、実績を確認する: インターネット検索や口コミサイトで候補となる業者を探します。特に修理専門店の場合は、その業者が扱っているブランドの実績、在籍する技術者の資格(時計修理技能士など)、設備の充実度などをウェブサイトで確認しましょう。
- 見積もりと対応を比較する: 複数の業者に見積もりを依頼し、料金だけでなく、納期、保証内容、見積もり時の説明の丁寧さなどを比較検討します。疑問点に対して、親身に分かりやすく答えてくれるかどうかも重要な判断材料です。
大切な時計を預けるのですから、価格だけでなく、技術力や信頼性、保証内容をしっかりと比較検討して、納得のいく依頼先を選びましょう。
オーバーホール費用を安くする5つのコツ

少しでもオーバーホール費用を抑えたい、と考えるのは当然のことです。ここでは、費用を安くするための具体的なコツを5つご紹介します。
- 複数の業者から見積もりを取る (相見積もり)
正規サービスセンター以外の修理専門店や量販店に依頼する場合は、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。同じ時計でも業者によって料金設定や必要な作業内容の判断が異なるため、比較することで適正な価格を知ることができます。インターネットで簡単に見積もり依頼ができるサービスもあります。 - 複数本まとめて依頼する
家族の時計など、複数の時計を同時にオーバーホールに出すと、「まとめ割」のような割引サービスを提供している修理専門店があります。もし他にメンテナンス時期を迎えている時計があれば、一緒に依頼することを検討してみましょう。 - キャンペーンやクーポンを活用する
修理専門店によっては、期間限定の割引キャンペーンを実施したり、ウェブサイト限定のクーポンを発行したりしている場合があります。依頼する前に、各業者のウェブサイトなどをチェックしてみましょう。 - 不要なオプション作業を断る
見積もり時に、オーバーホール基本料金以外に「外装研磨(ケース・ブレスレットの傷取り)」などのオプション作業が含まれていることがあります。見た目を気にしないのであれば、これらのオプションを断ることで費用を節約できます。 - 保証期間を有効活用する
これは直接的な割引ではありませんが、オーバーホール後の保証期間内に再度不具合が発生した場合、無償または割引価格で再調整・再修理を受けられる場合があります。保証内容は依頼先によって異なるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
これらのコツを活用し、賢くオーバーホール費用を抑えましょう。
まとめ:オーバーホールは“未来への投資”か“無駄”か

さて、時計のオーバーホールは結局のところ「もったいない」のでしょうか、それとも「未来への投資」なのでしょうか。
結論から言えば、それは「時計の価値」と「あなたの価値観」によって決まると言えます。
オーバーホールが「無駄(もったいない)」と感じられる可能性があるケース
- 時計の購入価格や市場価値が、オーバーホール費用を大きく下回る場合。
- 特に思い入れがなく、故障したら買い替えるつもりでいる安価な時計の場合。
- 今後、その時計を身に着けて使う予定がほとんどない場合。
このような場合は、無理に費用をかけてオーバーホールするよりも、「現状のまま保管する」あるいは「売却する」という選択肢も現実的です。
オーバーホールが「未来への投資」となるケース
- 高級ブランドの時計や、資産価値のある時計の場合(定期的なメンテナンスは価値維持につながる)。
- 大切な人からの贈り物や、特別な記念など、強い思い入れのある時計の場合。
- その時計をこれからも長く愛用し続けたいと考えている場合。
- 故障してから高額な修理費用を払うリスクを避けたい場合。
これらのケースでは、定期的なオーバーホールは、時計の寿命を延ばし、良好なコンディションを保つための「必要経費」であり「未来への投資」と捉えることができます。
【最終判断のためのチェックリスト】
□ その時計の購入価格や現在の市場価値は?
□ オーバーホールの見積もり費用はいくらか?
□ その時計に特別な思い入れやストーリーはあるか?
□ 今後もその時計を使い続けたいか? 使用頻度は?
□ 機械式かクォーツか? 防水性能など特に維持したい機能はあるか?
□ 故障した場合、修理費用はいくらまでなら許容できるか?
最終的に決めるのはあなた自身です。ただし、一つだけ確かなことは、「故障してから(止まってから)のオーバーホールや修理は、動いているうちのメンテナンスよりも高くつく可能性が高い」ということです。
「もったいない」と感じる気持ちも理解できますが、将来的な大きな出費を防ぎ、大切な時計と長く付き合っていくためには、定期的なオーバーホールを検討する価値は十分にあると言えるでしょう。
【FAQ】よくある質問と回答
最後に、時計のオーバーホールに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1: 時計のオーバーホールは何年ごとにするものですか?
A1: 一般的に、機械式時計は3〜5年ごと、クォーツ時計は5〜7年ごとが目安とされています。ただし、これはあくまで目安であり、時計のモデル、使用状況、メーカーの推奨によって異なります。お持ちの時計の取扱説明書を確認するのが最も確実です。
Q2: キタムラのオーバーホール料金はいくらですか?
A2: カメラのキタムラでは、提携修理工房によるオーバーホールサービスを提供しています。2025年5月現在の基本料金目安は、ロレックス(自動巻き3針)で39,600円~、オメガ(自動巻き3針)で30,800円~ などとなっています。ただし、部品交換が必要な場合は別途費用がかかります。詳しくは最寄りの店舗にお問い合わせください。
Q3: 10年以上放置した時計は直せますか?
A3: 修理可能な場合が多いですが、状態によります。長期間放置された時計は、内部の油が劣化・固着し、部品が摩耗・破損している可能性が高いため、通常のオーバーホール料金に加えて高額な部品交換費用が発生するケースが少なくありません。また、古いモデルでは部品が製造終了(廃盤)となっており、修理自体が困難な場合もあります。まずは見積もりを取って状態を確認することをおすすめします。
Q4: 安い機械式時計でもオーバーホールすべきですか?
A4: 費用対効果と、その時計への思い入れによります。オーバーホール費用が時計の購入価格や現在の価値を上回る場合、経済的な合理性だけで考えれば、買い替えを検討するのも一つの選択肢です。しかし、価格に関わらず愛着がある時計であれば、オーバーホールして使い続ける価値はあるでしょう。
Q5: 20年放置したロレックスはオーバーホールできますか?
A5: 可能性はありますが、高額修理になるリスクが高いです。20年間メンテナンスされていない場合、ゼンマイ切れ、歯車の深刻な摩耗、サビなど、複数の部品交換が必要となるケースが多く報告されています。部品の入手可否も問題となる可能性があります。まずは正規サービスセンターか、信頼できる修理専門店に相談し、見積もりを取ることを強く推奨します。
この記事が、あなたの時計のオーバーホールに関する疑問や不安を解消し、最適な判断を下すための一助となれば幸いです。